1.介護分野のリスクマネジメント (基礎編)
1−@リスクマネジメントの仕組み
ケーススタディの答え

新入社員の事故防止策

旧来型の事故防止活動ではどうするでしょう?どの施設でも行っていることですが、先輩職員による「マンツーマン・OJT」による指導を行います。つまり、あるベテランの先輩職員が選ばれて、新入職員の指導係として手取り足取り「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)」で指導に当たるということになります。新入職員が運良くミスをせず事故を起こさなければ良いのですが、運悪く事故を起こすと、新入職員だけでなく、指導係の先輩職員も指導不足として責任を負うことになってしまいます。

この「マンツーマン・OJT」のやり方は、新入職員の指導方法としては適切かもしれませんが、リスクマネジメントの手法という面では、あまり意味がありません。それでは、リスクマネジメントではどのような対応をするのでしょうか?

まず、この新入職員が担当するご利用者一人一人をケース別にリスク評価をします。「ケース別」というのは仕事ごと、場面ごとという意味ですので、ご利用者Aさんの排泄の介助の評価は?食事介助の評価は?ということになります。そして、仮にベッドから車椅子へのトランスファーというケース(仕事)では3人の方が危険度が高いと評価されたとします。急にバランスを崩すことがある上に、体重が重い、なんていう場合です。

評価が出たら次に個別具体的に対策を立てます。例えば、この3人のベッドから車椅子へのトランスファーは「新入職員が独りで行ってはいけない。必ず、近くにいる先輩職員に声を掛け二人で介助を行うこと。」という、決まり(ルール)を作ります。これがリスクマネジメントの対策です。

「リスク評価とこれに対応する個別具体的な対策」、これがリスクマネジメントという手法の全てであるといっても過言ではありません。また、「ルールにする(仕組みにする)」ということが大切なのは、リスクに対する対策が「組織の仕組み」として作られた以上、そこには「誰々の責任において絶対事故防止」という気合論(精神論)ではなくなるので、職員が安心して取組めるのです。せっかくリスク対策を行ってもいざ事故が起こった時は、相変わらず起こした人の責任だけが追及されるようでは、取組む職員さんもやりがいがありませんから。